デッキにある停車駅案内		[Wilmington駅]ホーム

【高速専用路線を持たないアセラエクスプレス】

私の乗った「アセラエクスプレス2250」は、定刻どおりにワシントンユニオンステーションを出発しました。
駅構内を離れ、左にメトロライナー等で使われるアムフリート車両の入換列車と並走。その後地上に上がったばかりの地下鉄と並走しながら抜かれると、それに怒ったかのように「アセラ」は加速を始めました。
その加速は、私が今まで乗ったことのあるアメリカの列車とは比べ物にならない勢いで、車窓を流れる風景から、あっという間に150ｋｍ以上の速度に達したと思われます。
加速中の騒音も、乗客の乗る車両には一切動力がないことから、モーター音等は感じることなく、とても静かな滑り出しです。
細かなことを書くと、この「アセラ」は客車の前後に機関車を連結した「動力集中型」の高速列車のため、日本の新幹線のような客車に動力を持ったいわゆる「電車型」の高速列車と比べると、静穏性ではアセラが勝るものの、加速率では新幹線の方が性能が良いはずなのですが、私の感じた限りではアセラの加速は新幹線と比べても遜色なく、とても心地よいものでした。

ワシントンからニューヨークまで362Kmで、私の乗ったアセラは６駅に停車しました。
基本的にほとんどのアセラは全列車同じ停車駅ですが、時間帯や曜日によって「BWIエアポート(BWI Airport)」と「メトロパーク(Metropark)」に停まらない列車が存在します。
上の運行ダイヤを見ていただくと分かるとおり、結構こまめに停車するので、平均時速はおよそ130Km程度となってしまいます。
アセラの最高速度は240Kmなのに、平均時速が130Kmになってしまう理由に、アセラは高速列車でありながら、専用の高速路線を持たないのも原因のひとつです。 日本の新幹線やフランスのＴＧＶは、時速250km以上でずっと走り続けられる専用の高速路線を走っていますが、アセラは全ての区間で在来線を走行します。
我々日本人の感覚では、在来線を時速200Km以上で列車が走行すことはなかなか想像できませんが、欧米ではそれほど珍しいことではありません。
特にアセラの走るアムトラック北東回廊では、アセラの登場を機に在来線の改良を行い、踏み切りの立体交差化をはじめとする各種安全対策が講じられたようです。
しかしながら、所詮は在来線の改良。カーブや鉄橋など速度制限が設けられている箇所が多く、最高時速の240Kmで走行できる区間はかなり限られてしまうので、平均時速が130Kmまで落ちてしまうようです。
実際の乗っていても、時速200Kmを超えて走っていたと思われる区間はあまりなく、停車駅近くでは低速での運転が続いたり、駅出発時にもドアが閉まっているのになかなか走り出さないなど、日本人から見れば、運行ダイヤに関してまだまだ改良の余地があるように見えますが、こればかりはお国が違うのでなんとも言えません。

しかしながら・・・
最高時速に対し、平均時速が遅すぎる感があるこのアセラでも、先記のとおりその居住性は世界ＴＯＰクラスでとてもよく、速度が原因でアセラへの気持ちが幻滅するようなことは私自身ありませんでした。

車窓からみえた立派な橋		[フィラデルフィア(Philadelphia)駅]ホーム

第７話「車窓風景とニューヨーク到着」につづく

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