さらばナッチャンRera＆World（擬似乗船動画付）【ひとり汽車旅・のりものの旅】

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さらばナッチャンRera＆World（擬似乗船動画付）　[平成20年（2008年）9月13日訪問]　update 14/DEC/2008

【ナッチャン姉妹の撤退に思うこと】
　2008年(平成20年)10月31日(金曜日)。青森－函館間の航路から「ナッチャンRera」と「ナッチャンWorld」が撤退した。
撤退の大きな理由は、08年中盤に世界中を襲った"原油高騰"による大幅な運行コストのアップ。
両船を運航していた東日本フェリーは、ナッチャン姉妹だけでなく、フェリー事業そのものから撤退するという、経営方針の大きな変更を宣言した。
世界最速高速フェリーとしてデビューした姉妹船の就航は、"Rera"が2007年9月。"World"は2008年5月。後に就航した"World"に限っていえば、就航から僅か6ヶ月で運行を取りやめてしまったことになる・・・。

　オーストラリアで造船された同船は"双胴式"と言われる特徴的な構造と、"ウォータージェット推進"により高速運行を実現。かつての連絡船が4時間要した青函航路を半分の2時間で結んでいた。
その所要時間は青函トンネル経由の鉄道と遜色がなく、また大型の船体を活かしたゆとりある居住性。スタイリッシュでありながら、かわいらしいイラストが施されたその姿は、大きな話題を呼び、フェリー業界の新たな試みを感じさせるものだったが・・・。

　就航から僅か1年2ヶ月で撤退には、部外者から勝手なことを言わせてもらえれば、燃料高騰以外にも、マーケティング不足もあったのではないかと思わないこともない。青函区間を2時間で結ぶ船が必要だったのか。またその対価を支払うだけの需要があったのか。等など・・・
　1988年(昭和63年)に開通した青函トンネルも、開業当初は青函連絡船に変わる列車として「快速海峡」が運行されていたが、トンネル開業ブーム以降は、利用客が激減し、2002年(平成14年)に廃止された。以降青函トンネルを走る旅客列車は特急しか存在しない。
　青函トンネル開通以前から、北海道への旅客輸送は飛行機主体となっており、特に関東－北海道間は9割以上が飛行機による移動。特に近年は航空料金の多様化・低価格化により関東以外の地域。もちろん東北各地から北海道への旅客移動は飛行機へのシフトが急激に進んでいると思われる。

　貨物輸送に関しては、対北海道向けの輸送は長距離になることからコンテナ列車による青函トンネルの利用が堅調であるが、この貨物列車へのコンテナの積み込みは、東京・大阪・札幌など青函以外の場所で行われる。トラック輸送に関しては北海道の大消費地である札幌に程近い苫小牧・小樽と本州各地を結ぶ航路が充実。トレーラーの荷台だけを航送するＲＯＲＯ船輸送によりトラック乗務員を船内に拘束することもない。
　このような事情により、対北海道向けの物流の多くは、もはや青函航路を利用していないと思われる。
青函を通る一部のトラック輸送も、一般船より高額な費用を支払ってまで、2時間短縮の"ナッチャン"を利用するか疑問がある。

"ナッチャン"1船の建造費が約90億円。さらに青森と函館には大金を投入し、専用のターミナルを建設し、青函航路の復権を狙ったと思われるが、その道は燃料高騰がなかったとしても、非常に厳しかったのではないかと思われてならない。