１９９４年３月１２日（土）　【新横浜−−＞新大阪】

朝４時に目覚まし時計が鳴って、昨夜旅行に出る計画を立てていたことを思い出す。
「本当に出発してもいいものだろうか？」迷っているうちに時計は、４時２０分を指している。

「えーい　行ってしまえ！」

日本から韓国へ、今回の様な陸路と海路を使って行くのであれば、便利な切符がある。
ＪＲで発行している「日韓共同きっぷ」である。これは、新幹線、日本から韓国までの船、韓国での鉄道のチケットがセットになったもので、当然割引されている。
今回の旅行には、もちろんこの切符を使おうと考えている。この切符は東京でも入手可能だが、なんせいきなりの旅立ち、今日東京で旅行会社が開店するのを待って手配をお願いしたのでは、下関からの韓国行きのフェリーには間に合わない。
福岡からプサンに向けて、「ビートル２」と言うジェットホイル（高速船）も毎日就航しているが、福岡が１０時発なので、こちらはもっと間に合わない。

【のぞみ３０１号】 *「のぞみ301号」は現在存在しません。

　新横浜へ到着した「のぞみ」はガラガラ。指定された１号車には東京から誰も乗っていなかった。新横浜発車後も１号車の乗客は約１０人。いくら土曜日であってもあまりにも空いている。約１時間で浜名湖を通過する。
実はこの列車、東海道新幹線に「のぞみ」が登場したときに話題となった、いわゆる「名古屋とばし」の「のぞみ３０１号」である。
名古屋は、駅通過の３分前ぐらいから枕木が目で追える位までスピードを落とし、警笛をならしながらゆっくりと申し訳なさそうに通過した。
僕は貴重な体験が出来て嬉しくなったのか微笑していたと思う。名古屋の人ｽｲﾏｾﾝ！
この列車が登場してからもう２年ぐらいたつと思うが、名古屋駅のホームでは「これがあの列車！」と指差す光景がいくつかあった。同様に通過する京都でも同じであった。
今回は別に、始発の「のぞみ」に乗ってまで急いで来る必要はなかったのだけど、せっかく朝早く大阪へ向かうのであれば、ぜひこの貴重な「名古屋とばし」の列車に乗って見たかった。
やっぱり私は、鉄道好きなのである（笑）。

　新大阪到着、ちょっと残念なことにホーム入線直前に信号で止まってしまった。せっかく新横浜からノンストップだったのに・・・。
カーブで止まっている自分の乗った「のぞみ」。窓から後ろを眺めてみるとさすがに長い！　新幹線が４００メートルもあることをあらためて実感する。

今、８時５５分。新大阪駅構内の喫茶店で紅茶を飲んでいる。もう大阪にいるのだ。学生時代の貧乏旅行で各駅停車に乗りなれた私にとって、あまりに早すぎてまだ頭が理解していないようだ。
耳には、隣のテーブルでコーヒーを飲んでいる、おばさんたちの関西弁が響いている。
大阪で韓国行きの手配をしようとしても「ＴＩＳ」も「ＪＴＢ」も旅行会社はみんな１０時開店である。1時間ゆっくり過ごす。「のぞみ３０１号」の速さは私には無意味であった。

「本当に韓国へ行けるだろうか？」

新大阪の喫茶店にて

第３話「韓国行きの切符」につづく

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