１９９４年３月１２日（日）

【プサン入港】

　２日目を迎えている。僕は船の揺れを懐かしく思いながら眠っていた。
６時３０分。レストランの開店案内放送で目を覚ます。船は予定どおり釜山沖に停船している。エンジンも停止しているようでとても静かだ。
船室から外を見ると、周囲２０ｍ位の小さな島が４つ見えた。そのうちの一つには灯台らしき姿の建物も見える。船室が東を向いていたので、久し振りに水平線からの日の出を見ることが出来た。水平線からポカッと明るく太陽が出てくるのを期待したが、実際は水平線をすこし上がったところで輝きを増していった。
部屋のＴＶは、もう日本の地上波を受信することが出来ない。ただし、ＢＳ放送は受信可能でＮＨＫの２波と韓国１波が映る。ＮＨＫ衛星放送を見ているとやっぱり海外旅行中であることを忘れてしまう。
コーヒーを買いに、船中央のロビーへ下りる。帰りに船室とは反対側のデッキに出てみると、そこには高層ビルが立ち並ぶ「釜山」の街がすぐそこに見えている。
この船は２時３０分からここに止まっていたのか・・・。 まだ７時前なのに、出口付近にはもう荷物の山が積まれている。タイガーのポットもたくさん並んでいる。もっとゆとりを持って旅が出来ないのかな・・・。　もっとも彼らにとっては旅ではないかもしれないが・・・。

船は予定より１０分位遅れて動き始め、釜山港に入港していく。

到着３０分位前になって、船員がルームーキーを取りに来たので不安だった入国カードと税関申告書を確かめてもらった。桟橋が近づいてくる。港にはイギリス船籍の客船と福岡−釜山間のフェリー「カメリアライン」が止まっている。
イギリス船籍の船は、私が昔フランスからイギリスに向かうとき乗船したＰ＆Ｏと言う会社の船で、懐かしくその船を眺めていた。

釜山港の様子（写真提供：谷川さん）

【韓国入国】

　下船はまた、おばちゃん達で大混乱！。見えないデッキから「おさないで！、並んで！」という船員の叫び声が、聞こえてくる。
入国審査は窓口が、韓国人・外国人・船員と別れてはいるが、最後の方に下船したこともあって、入国係員はどこでも空いている窓口にところに並ぶように指示している。
入国係員というのは、我が国も含めてどこも無愛想。ちらっとこちらの私の顔を見てパスポートの全ページを調べている。時間が長く感じる「やっぱりＶＩＳＡなしでは入国できないのでは？」と言う不安が一瞬ものすごく感じた。
しかし係員は空きページを探しているだけだったようで、最後の出入国スタンプがあった次のページにポーンと入国スタンプを押し、２枚複写になっていた入国カードの２枚目をパスポートにはさんで返してくれた。押された入国スタンプは赤い四角のもので「ＰＵＳＡＮ」とある。

　荷物検査はＸ線を通した後、また韓国人・外国人別に並ぶ。５分位並んだであろうか？。突然今までしまっていた隣の検査台があいて、私の後ろに並んでいた日本人が荷物検査なしに申告カードの提出だけで通過していく！　僕の並んでいた列の係員もそれを見て、荷物検査をやめ申告カードだけを提出するように言ってきた。
韓国って国はいったいどうなってるの？　こんなんだっら最初から荷物検査なんかしないで欲しい！　可愛そうなのは荷物検査の途中だった人。かばんを開けられたまま、他の日本人が全部通過するまで待つしかない。
荷物検査が無くなってしまったから、その先の両替所は大混雑！　団体でやってきた日本人のお姉さんたちが両替所の前で固まって、両替の列に並んでいるのか、そうでないのか分からなくて、ちょっとムッとする。一人ぐらい回りの迷惑を考えられる人がいてもいいのに・・！　少し睨んでみるが効果なし。
両替所で３万円出す。１００００ウォンが２２枚返ってきた。

入国ゲートをくぐった。「韓国」である。

見慣れない車のタクシーが止まっている。本当に来てしまった。

一緒に下船してきた、背の低い白人の女の子が、迎えに来ていたボーイフレンドと再会を喜んでいた姿が印象的だった。

私のパスポートに押された韓国の入国（右）出国（左）スタンプ

第７話「セマウル発見」につづく

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